大阪の宿

大阪で民宿・・その心は「たこ焼き」である・・は、昨日の話・・よく似ている?・・そんなわけではないが、映画「大阪の宿」は、このペンション付近がふんだんに登場する1954年公開の日本の名作映画。なにしろ土佐堀川畔の「宿」が、この名作のテーマ拠点。ペンションに近い中之島から北浜の“当時”がふんだんに映像化されている。

それに、なにしろ出演者がすごい。佐野周二乙羽信子、細川俊男、左幸子、安西響子、等々。制作スタッフも監督・五所平之助、音楽・芥川也寸志、撮影・小原譲治、美術・松山崇と、当時の最高スタッフによる(大作ではないが)傑作らしい。

この映画の原作は同名の小説「大阪の宿」。作家・水上瀧太郎(みなかみ・たきたろう)の作。その文学碑は土佐堀川朝日新聞前にある。小説そのものは、高級サラリーマンだった作者が大阪に転勤した経験を基に描写(大正6年から8年時代の大阪)、その時代の「庶民風景」だが、そのテーマ、描かれている味わいは、どこか「たこ焼き」に近い。

原作の大正時代、丁度その頃は、いけいけどんどん・・ニッポンが大陸進出する時代。そんな時代・・「庶民の風景」を元気すぎる東京に求めても描けない。庶民の姿を「肥大する国家」と対比的に扱うには、少々情けない人間が暮らす大都市「大阪」が似つかわしい。なんといっても、その自虐的ユーモアが救いになる・・これを、“いい人”しか登場しない「帝都・東京」をベースにした映画「三丁目の夕日」に対比させると味わい深い。

この映画の最後、主人公は大阪で「人間的な失敗」を犯して東京に帰任。「大阪の宿」は、商売繁盛とはいかず・・まあ、なんとも人間的なエンディングで映画は終わる。

ハッピーエンド・・隆々とした巨大な繁栄が東京タワーや東京スカイツリーで“約束”されている「首都・東京」とは違って、いつの時代も、大阪は「たこ焼き」・・猥雑と滑稽が似つかわしい。

京都・大阪の旅 http://www11.ocn.ne.jp/~pen-lee/   
The LEE Osaka downtown(小さな大阪の宿・大阪の民宿です)http://pension-lee.net/