29800円の海外旅行 その13

最終日の昼食は久光百貨店の地下食料品売り場に併設されているフードコートで昼食をとった。大阪名所! 阪神百貨店の地下食料品売り場の雰囲気をコピーしようとしているように見えるが、なかなか難しそうだ。おなかも膨れたところで地下鉄でホテルに戻る。1日目、夜遅く上海浦東空港に着いて以来、ミスター・チンと名コンビだった「ややくたびれた中型バス」でリニアモーターカーの駅に向かう。

やくたびれた中型バスには、この旅程中、途中途中で慎重な整備点検が入っていた。まっ黒けのベテラン整備工がバスを追いかけ、昼食時間の休憩停車中にエンジン点検。その都度、ごく当たり前のように運転手さんと親しげに話す姿があった。急な不調ではなく「いつものこと」を実感し不安はなかったが、なんだか不思議な光景だった。それにしても、この運転手さんもミスター・チン同様、嫌な顔一つせず、朝早くから夜遅くまで本当によく働く。4日間、同じバス、同じ運転手さん。頭が下がる。

本当によく働く中国の人たちをまじかに見続けてこんなことが頭をよぎった。日本のように「国」というものを意識せずとも「国」であることが、たやすい国。逆に、為政者が絶えず働きかけ「国」であることを強く意識させなければ、国の概念が失せやすい国。どちらがよいのか分からないが、一生懸命働く庶民の姿は国も国境もなく、人としての魅力にあふれている。強い!

おんぼろ(失礼)バスが、リニアモーターカーの駅に着いた。よく働く運転手さんとはここでお別れ、丁寧に礼を述べお別れした。さて、時速400キロ超のリニアモーターカーだが、近ごろの中国をよくよく考えてみると、ワクワクして乗ることができない。見聞きしていた人気もなさそうで、駅舎の人影はまばら、いっそう不安がよぎる。

ミスター・チンが、ヤル気なさそうな駅員にどなり声をあげている。「団体なのに、なぜいちいち自動改札を通らなければならないのか!」「団体改札を開けろ!!」プロ根性をまた見せてもらったが、駅員のヤル気のなさに、さらに不安が増幅してきた。同じリニアモーターカーでも、ぶっ飛び系ではなく、大阪地下鉄・鶴見緑地線の癒し系のリニアしか乗ったことがない。

ぶっ飛びそうなリニアモーターカーがホームに入ってきた。