29800円の海外旅行 その9

無錫で2泊の後、3日目はいよいよ上海に向かう。1日目、上海浦東空港に到着した日は夜遅い上海を後に高速道路をひた走りに走り無錫入りしているので、いまだ上海のイメージはゼロ。魔都・上海に期待が膨らむ。

途中、お決まりの「お土産屋さん」に立ち寄る。29800円の超破格のツアーでは、これまで淡水真珠屋さん、絹布団屋さん、刺繍屋さん、それから、それから・・忘れるくらいに巡ったので、すでに記憶が定かではないが、まだ行く! 今度は、中国茶魯迅公園内の魯迅博物館に併設されている、中国骨董。なかでも秀逸だったのは、魯迅博物館内の中国骨董だった。どこまでが博物館展示で、どこからが骨董土産なのか、まるでグラデーションがかかったようにスーッと、霧が立ち込めるように「お土産屋さん」に紛れ込む仕掛け、それは見事!!

魯迅と日本との関係は深く仲むつまじいものであったようだから、館内の女性ガイドの説明には、ただでさえ親近感を覚える。それでつらつら引き寄せられると、急に骨董土産の場に闖入している、という具合。お見事だ。ただ、最初に訪ねた淡水真珠などは、その市場性が薄いことは承知の事実であろうし、昔、琵琶湖で養殖が盛んだったから、関西人の認識レベルは高いと考えるのが妥当。したがって、この最初に連れて行かれた淡水真珠屋さんで、関西人は皆「どん引き」となってしまうのではなかろうか。

お土産屋さんツアーも悪くはないが、巡る順番を工夫した方が売り上げも上がったろうに、と、思わずミスター・チンにアドバイスしてやりたくなった。それほど皆、何も買っていなかった。さて、いよいよ上海中心部に入った。

見えた! 上海名物、地球の球と月の球の両方を串刺しにしたようなシルエットの東方明珠塔だ。上海バンスキングの時代にはなかった、いまこの時代の上海定番スポット。上海ワールドフィナンシャルセンター超高層ビルもゴツイ。ただ、意外だったのは、この川「黄浦江(こうほこう)」には、大した迫力を感じない。

川幅などのスケール感は丁度、バンコクチャオプラヤーにそっくりだが、まったく生活臭が無い。両岸のよく整備された公園付近(外灘:わいたん/バンド)も綺麗に過ぎて、愛嬌というものがまったく感じられない。むしろ綺麗すぎて少々息苦しいほどだ。もちろん大阪や東京のスケール感をはるかに超えているから、その立派なことは言うまでもない。が、生活臭があまりにも掻き消されている。これが昨年の上海万博の余熱というものか?

奇妙な話ではあるが、上海のこの川辺に立ち夕焼けを見ていると、日本でも大阪でもなく「春に見た」バンコクチャオプラヤーのニオイあふれる夕焼けが、やけに愛おしい。猥雑に紛れ込むことが許される魅力、それもまた旅の魅力であろう。魔都・上海は、すでに無味無臭の綺麗な街だった。つづく