29800円の海外旅行 その4

この29800円の海外旅行の4日間には、期間中の全食とサーチャージ料金が含まれている。今夏の関空〜上海間のサーチャージ料金の相場は往復9千円ほど。行程中、市中引き回しのような「おみやげ店巡り」が数多く挿入されているのは言うまでもないが、無錫日航ホテル(無錫2泊+上海1泊)の客室グレードと朝食の充実度を考え併せると、画期的な低料金だ。

2日目早朝、おしゃれな客室カーテンを引き放つとすぐ眼下に(ニッポン的表現では)新築テラスハウスの工事現場が見えた。総戸数100戸程度、最後の仕上げ真っ最中のその「居住エリア」では、この地域特有の水路も修景されている。白壁にグレー基調の屋根瓦が、ファサード(建物正面)をおしゃれに見せている。清楚で魅力的な住環境だ。朝6時半、こんなに早くから職人さんらが、もう仕事の準備にかかりはじめている。きっと完成まじかの突貫仕上げを指示されているのだろう。

散歩に出た。客室から見たホテル正面の真向かいは「居住エリア」だったが、ホテルの裏側にまわるとそこは、小さな店舗群が上手に配置されたおしゃれな「ショッピングエリア」として整備中だった。こちらも完成まじかの仕上げ工事真っ盛り。と、ホテル横の道路向かいを見ると、無理やり取り壊されている最中の商店長屋。長らくここで商売を続けていたように見える「花屋さん」だけが、取り壊しに抵抗するように淡々と開店準備中。

9月11日付け朝日新聞にはこんな報道があった・・「中国の最高裁が土地収用を批判」との見出しで、開発に伴う土地収用が各地で暴動などの過激な動きを引き起こしている。住民の意向を無視した強制執行の申請を安易に認めず、住民が過激な抗議に出た時も収用作業を中止させるよう促した・・ただし、この中国最高人民法院最高裁)の公式サイトは通知から数時間後、抹消された・・というものだ。

いま目の前にある無錫日航ホテルとその周辺の開発事例が、これら報道にあたるかどうかは知らないが、このホテルをコア機能に、「居住エリア」や「ショッピングエリア」さらにモロモロ機能を「計画配置」する再開発であることは理解できた。ちなみにこのホテルの立地は、無錫中心部からいくぶん離れた南端。新しい街がつくられてゆく一方で、街のはじっこの旧市街の生活は猛烈な勢いで、霞のように消えてゆくようだ。

部屋に戻り、もう一度遠くを眺めると、なんだか既視感のある巨大構造物が数キロメートル先に見える。日本のそれとはやや違う。フランスやスリーマイル島の、「それ」に近いシルエットだ。目を凝らす・・それはやはり「原発」のようだった。手に取るような先に原発が見えた。つづく