29800円の海外旅行 その3

4日間のツアー中、見事なまでのガイド管理能力を発揮してくれたミスター・チンさん。その魅力は、少々荒っぽい言葉に包み隠した(すなわち「シャイ」)中国と日本双方への気遣いと愛だったように思う。また、その時節に叶ったガイドぶりにも驚き、その時々ミスター・チンに問いかけた。こんな風に

Q.ニッポンに留学していたの?  A.10年ほど前、2年間ほど宇都宮でパティシエの勉強を
Q.では、歴史やガイドツアーの知識は?  A.添乗業務の国家資格(中国政府の)を取るため猛勉強しました
Q.独身?  A.いま、結婚は諦めてます
Q.では、夢が?  A.上海でケーキ屋を経営すること、この仕事でほぼ無休で働き必死でお金を貯めてます
Q.・・(質問は延々と続いた)   A.・・(答えも延々と続いた)

質問好きの私は、4日間ずっとこのような問わず語りを投げかけた。それほどミスター・チンは人間的魅力にあふれていた。それに、訪ねた先々で内需勃興による「中国人の中国国内の旅」が活況を呈していたので、その状況(ガイドブックにはない、いま中国の社会風俗)を懇切丁寧に、しかも自己の生活に投影させて解説してくれる能力の高さに、すっかり魅せられた。ちなみにミスター・チンは、東京12チャンネル等で時々レポーターとして登場する、タレントのミスター・チンによく似ている。「知ってる?」と聞いてみたが、さすがに「知りません」

国内旅行を楽しむ、その溢れんばかりの中国人の姿は、まるで郊外レジャーに沸いた1960年代の日本そのものだったので、懐かしくもあった。

こんなことを言ってるが、無錫に向かっている送迎バスは、片道4車線の漆黒の高速道路(驚くことに、都心部を抜けると高速道路に一切道路灯が無い。この理由はまたあとで・・)を爆走中。見た目時速160キロ。やや古めかしいその送迎バスのスピードとスリルに、はや日付は変わったが、ウトウトもできない。ハッキリ言って怖い。

あ〜あ、もうすぐ午前2時(現地時間)と滅入ったころ、さすがに静まり帰った無錫日航ホテルにやっと到着。こんな時間になっても、ミスターチンは沈着冷静。パスポートチェックを伴う総勢20余名ものチェックインを瞬時に済ませて私たちを解放してくれた。はぁ〜、長い道中だった。

思いのほかデラックスな客室で、風呂も入らずバタン・キュー。短くて長い一日目がやっと終了した。