混浴文化

やおよろずの神は融通無碍の幅の広さが魅力的。ゆえに、陰陽石のご神体がユーモラスに生を称えていたり、混浴温泉にすっぽんぽんで来年の五穀豊穣を委ねたりもする。

東北取材の2泊目、寒河江市の次に泊まったところは宮城県の歴史も由緒もある某温泉旅館。知らなかったが、ここにむちゃくちゃ立派な混浴露天風呂があった。大食堂の夕食時、眺めてみれば人生の先輩らの宿泊がほとんど、このお年頃ならば夜10時にもなれば皆さん寝静まっているだろうと予測を立て、清流脇にあるその見事な混浴露天風呂に向かった。

狙いは的中、だ〜れもいない。清流沿いの数々の湯坪はたった一人の貸し切り状態、最高だ。ところが、ン? ムムム? カップルが入ってきた。確実に男は若そうだ。ということは女も?

男の眼はこちらを射るように刺してきた。ボクは何も悪いことしてへん、ここは混浴露天風呂だ。女は自分の小タオルと男の小タオルで前面部分の「全面」を覆い隠し、やはりあからさまに迷惑そう。ボクは何も悪いことしてへんのに。

一番奥にここの名物、洞窟風呂がある。この風情は江戸期から続いているそうだ。文化である。そこに行くにはボクの前を通って行かなくてはならない。どないしよるか見といたろ・・

露天にごろり30分。しびれを切らせたかそのカップル。やはり洞窟風呂へと移動をはじめた。と、いうことはボクの目の前を横切ってゆく、のか? きっとそうだ。いま横切った。

男がぎょろりと横眼で睨みつけ通り過ぎた。女はプイッとそっぽを向いたまま通り過ぎた。ボクは日本の混浴文化に浸かっているだけやん、なぁ〜。思わず心の中でつぶやいた「ニッポンの混浴は文化やで〜」

やや、うっとおしい心持になり、そのカップルを目で追いかけてみた。前面の全面を覆っていた小タオルは「後ろ側」には寸足らずのようだった、背面側は極めておおらかに日本文化を表出していた。

それで好し!!