寒河江市(さがえ)のサクランボ

大阪の地下街、ディアモールでサクランボの種飛ばし大会があった。たまたま通りかかった早朝、その準備の光景を見た。東北に行ってもいいものかどうかどうか迷っていたから「山形県寒河江市」というノボリを見て、大汗かいて準備しているお兄ちゃんに、思いきって声をかけてみた。

毎日新聞の旅の連載取材でおじゃましてもいいですか?」答えてくれたのは、寒河江市役所の観光担当・渡辺さんだった。大汗かいて準備に精出し、働く姿は役所の職員というよりも、サクランボ農家のあんちゃんという風情。「よろこんでお引き受けします。是非ともお越しください」と、笑顔で応じてくださった。あれから2カ月。寒河江取材に行ってきた。

現地に到着すると、いきなりシーズンはずれのサクランボの種飛ばし大会(7月中旬までがシーズン、この大会は特別仕立て)で歓待してくださった。寒河江日本記録は25mほども飛ばすらしい。競技は全3投。ボクも挑戦、2投目・・吹きかけた息にうまく飛び出したサクランボのタネは13.5m地点。初めてではここまでは飛ばないらしい。大会の係員としてかいがいしく動き回られていた、同じく寒河江市役所の美人係長に褒めてもらった「うまい、うまい」。思わず調子に乗る・・

そんな調子で始まった寒河江取材。山形盆地にあるこの小さな町を巡りに巡った。初めて食べた寒河江のサクランボは、口の中いっぱいに上品な甘みが広がる。大阪人はこの味知らん、美味い! 本当に美味い!! 冷やしそばもうまかった。 手作り鯉のぼりや天台の寺も伝統の中に親しみを感じた。

しかし何より、この街の人がイイ。会う人、会う人が老若男女を問わず皆チャーミングなのだ。この連載取材もすでに3年目。いろいろな所に行かせてもらったが、人がこんなにもチャーミングな街ははじめてだ。

夜、全ての取材を終え、対応してくださった渡辺さんや美人係長を含めささやかな打ち上げ会となった。会は盛り上がり、3軒目、疲れ果てた美人係長がダウン。が、そのダウンの様子は、あくまでもサクランボのようでチャーミングだった。

翌朝、ホテルのフロントに渡辺さんから差し入れが届けられていた。昨日取材したバラの切り花農家からフレッシュな「浴用のバラ」がイッパイ。これは嫁はんにエェお土産や! 帰宅後早々、嫁はんは喜び、バラ風呂が試された・・残り湯にぷかぷか浮くバラだけは綺麗だった。

寒河江市の渡辺さん。そして皆さん。どうもありがとうございました。たいへん感謝いたしております。この「ものがたり観光行動の旅」は、8月に紙面化される予定です。どうぞお楽しみください。