質素倹約

そのようなことを意図的に狙ったわけではないがコンクリート打ちっ放しの建物は禁欲的である。建築資金が足らず、あっちこっちの建築会社にあたり、「まぁ、なんとかやってみましょう」と言ってくれた会社が得意としていた工法がたまたま、これだった。この小さな宿の風体(コンクリート打ちっ放し)とは、そんな「たまたまの出会い」だったが、そこそこ気に入っている。

近ごろの宿屋は、たとえそれがこんなに「小さな商売」であったとしても、なんやかんやと評価される。利用者にとっては情報の共有という点で便利、ネット社会のいい所でもある。ただし、人の個性が千差万別なように、その好みも本来は千差万別。このような「公開評価」が、個性ある施設(宿屋であれ、食べ物屋であれ、なんであれ)をしんどい立場に追いやるのは、私が言うのもへんではあるが、少々しんどい。

そんなことを常々考えていたら、最大手の旅行会社で宿の評価システムを開発し「人気投票の仕組み」を稼働させた経験のある、いまは大学教授の観光のプロと一杯飲む機会を得た。氏いわく・・「そのような事に手を染めたこと。いまは深い反省をおぼえています。宿屋は本来、様々な個性があってしかるべき『評価の基準』が絶対ではない」と。

うっわぁ〜! ええこといわはる!!

ところが、切った刀でこうも付け加えた。「しゃ〜けど、コンクリート打ちっ放しのような質素倹約を連想させる建物は宿屋に不向きちゃいまっか」・・【お断り】彼は関東在住者で関西人ではない。ここいらの言いまわしは創作である。

本当はボクもそう思っている。痛い所を突かれた。「質素倹約は美徳だ!」そんな、やせ我慢。今年のゴールデンウィークは、ほんまに暇やなぁ〜