コミュニティカレッジ

琵琶湖の西岸に住んでいたころだからもうかなり昔のことになる。

就航したての外輪船ミシガン(京阪電鉄の子会社・琵琶湖汽船の観光船。いまも現役で活躍中)は、その企画の目玉として大津市姉妹都市アメリカはミシガン州・ランシング短大の学生を外輪船のガイドとして迎え入れた。その他の授業も組み入れつつ外輪船でガイドすること、それそのものがランシング短大の単位として認定された。

それら男女の学生は、アメリカの田舎町(行ったことないのでわからんが、たぶんそのはず?)からやってきて大津市内に集住しつつ、この外輪船の「生身の名物キャラクター」として人気を博した。毎年入れ替わる学生らではあったが、春から秋の観光シーズンの風物詩として当時、名物となった。(何年続いたかは記憶していないので、ご記憶の方はお教えください)

いま日本の大学では、4大・短大ともにインターンシップという就労体験型授業がブームとなっている。しかし、聞くところによれば金銭授受があってはじめて成立するインターンシップも多いと聞く。大学側が事前にお金を払って学生を受け入れてもらう。すなわち学生はお客さんの立場で「就労体験」するという。まるでキッズパークのように。

外輪船ミシガンでは、当初は心細い顔で乗船していた学生らも、夏の観光シーズンが近くなると一人前の顔になってゆくのがほほ笑ましく、このインターンシップ制度に感心したものだった。

アメリカの短大は概念的には日本の専門学校に近く、地域貢献や地域経済と深い結びつきを有している。だからコミュニティカレッジの名称もぴったりとくる。この外輪船ミシガンのきわめてハードなインターンシップ五大湖周辺の観光産業と関連付けられる。他方、日本の短大は歴史的に産業界一般を背景に広く薄く人材供給を担ってきた。だからコミュニティカレッジの名称は似つかわしくない。

そんな話を昔、京都の先達の先生から教えてもらったことがある。

あれから多くの時間が流れ、広く薄くの背景に存在していた日本の産業界はその立ち位置を大きく変えた。このたびの震災復興や原発事故の影響は、この傾向をより強烈に鮮明に映し出すことだろう。

有償で受け入れてもらうインターンシップ。聞けば聞くほど御伽話の世界に思えてくる。かぐや姫の時代は遠い。