虫歯と原発バブル

年に一度、毎年のように虫歯治療にやっ来る客人がいる。その方はニューヨーク在住歴20年超のUさん。Uさん曰く、「国民皆保険制度の整っていないアメリカでは、そもそも医療費がべらぼうに高い。さらに、虫歯治療ときた日にゃ〜(Uさんは関東出身)お金がいくらあってもやってらんねぇ〜」とのこと。

そんなわけで、航空券が一番安い時期を見計らいニューヨークからわざわざ虫歯治療にやってくる。もうかれこれ5年にもなる。そのUさん、リーマンショックの前年にはこんなことも言っていた。「アメリカでは、払えるあてもない人間にどんどんカードを発行し、次から次へと買い物をさせている。住宅ローンも似たようなルーズさ。近いうちにバブルはパンクする。誰もが異常と知りつつ消費に酔っている」と。

オランダのチューリップ投機によるバブルの例を引き、人類の近現代史は「バブルとその破たんの繰り返し」と、どこかで読んだ記憶がある。しかし、それとて、一旦熱を帯びれば止まる術を知らない「原発バブル」のことなど「想定外」だったはずだ。なぜなら経済バブルは、たとえ破たんしても、一斉一瞬、広域一括には人を追いやらない。こんな「ゴーストタウン菌」など、まき散らさない。

一旦燃え盛れば、そのエネルギーコストは水力や火力の比ではなく、無尽蔵で安い。おまけに絶対安全。クリーンエネルギーの模範。そんないいことづくめの触れ込みだった原発。この偽りの真実を突き詰めて考えてゆくと、近ごろの狂ったような投機マネーに行きつくような気がしてならない。

モノづくりや現物のやりとりが伴っていない、近ごろの狂ったような投機マネーの行きつく先、「金で金を生む」その勝手な理屈の最後っ屁が、実はこの原発ではなかろうか? 無尽蔵、そして絶対安全確実にしてローコスト。この理屈は投機マネー筋と同じ。その最後っ屁の権化が原発というわけだ。

どこにいるのか知らないが、超の字が10個も20個つきそうな超金持ちには、原発は何よりの「超越の神」・・バベルの塔だったに違いない。原発事故処理の多寡は投機マネー筋も負担するのだろうか? それとも、もうすでに活動してる?

ちなみに前出のUさん。格安シーズンの航空機チケットは「カードで貯め込んだ“ポイント”で往復タダ」らしい。ハァー、貧乏人には羨ましい話だが、ニューヨークから大阪。このタダ券にも原発の理屈「無尽蔵の仕組み」が、既に仕掛けられているような? そんな気がして気が滅入る。