ビジネス社会の栄枯盛衰

印刷もしてくれるそのデザイン会社は、この小さなペンションの近所、時々利用する。月曜日、今回も当り前のようにささやかな発注をかけた。ンッ?・・ところが、発注確認の「メール返信」がいつまでたっても来ない。仕方なく、ぶらぶらとその会社まで行ってみた。 あれっ? 閉まってる。人っ子ひとりいない。電話もかけてはみたが誰も出ない。

2日たって顔見知りの担当者から電話があった。ひと言「つぶれました・・」と。 

ひぇ〜! 近ごろこの会社は、社屋を自社ビルにし別棟にはオシャレな工房兼工場も揃えた。経営者もデザインセンスの高い方として有名だったのに。が、言われてみれば・・自社ビルに移ったころから「高価なグッズ類」が必要以上に購入展示されたり、長らくいた「なじみの社員」も去っていった。ちょっと「変」とは思ってはいた。が、あまりにも突然、「まさか」である。

電話してきてくれた若い担当者は、「ボクたちも突然知らされ動転しています」とのことだった。何の役にも立たないが「会社と貴方個人とは別人格、こんな時こそ今までのつながりを大切にしぃ〜や」と。

デザインワークの腕一本。人とのつながりと若さがあればなんとかなる。「根気なくさんと、しっかりし〜や」・・心の底からそう思う。受話器の向こうから、「ハイ・・」という消え入るような小さな声が聞こえたが、それ以上は何も言えなかった。

電話を切ってから、意味もなく彼に向ってもう一度だけ呟いた「根気だけは、なくしたらあかんねんで」と。3月3日、今日は雛祭りの日か・・彼には、若い奥さんや、小さなお子さんがいたのかもしれない・・