立春のころ

暦とはなんとよくできたものだろう。寒くて寒くて仕方なかった日和に柔らかさが射しこみ、2/4の立春からこっち、思わず外に出たくなる心地となった。近所の小さな子どもらも、毎年このころになると天神さんの境内をあっちにこっちにと走り廻る。それに、節分の催しなどでは、放たれた豆を「投げ受ける大人」も、童心に帰る。故に、子どもを追いやってうれしがる。春はそれほどうれしいものだ。

この小さなペンションの前、天満の天神さんでは、往時この辺りに乾物問屋がひしめき合った時代の名残で、海苔組合が「巻き寿司」の「丸かぶり」なる行事を催す。数百人もの人たちが無料配布された「巻き寿司」を両手持ちして、恵方といわれる南東に向き、神官の号令で一斉に「巻き寿司」をほおばる姿は、壮観でありユーモアがある。大阪らしい。

小学生のころ、この行事が大好きだった愚息。豆を両手いっぱい。巻き寿司を何本も(ちなみに、これはルール違反。お一人様・一本限りです)。「ウリ坊」がじゃれているかのように、天神さんと自宅(ペンション)全速力で行ったり来たりしていた姿が懐かしい。

折節の移りかわりこそ もののあはれなり

その「ウリ坊」は、え〜らい遠い所に留学中。今年は正月も帰ってこなんだ。天神さんの豆まきや巻き寿司をぼんやり眺めては、その「ウリ坊」のことを思った。季節の移ろいに年中行事。人の齢を再確認させてくれる春。本当にありがたいものだ。