斎藤祐樹投手の笑顔はサンゴの海に似ている。

パリーグの春季キャンプは牧歌的で楽しい。古くは、太平洋クラブ時代(いや、日拓ホームだったか? クラウンライターだったか? 当時このチームのオーナー企業は毎年のようにコロコロと変わった)、長崎県島原のライオンズキャンプを楽しんだことがある。行きはしなかったが、大ファンだった近鉄バファローズの延岡、日向(いずれも九州・宮崎県)、宿毛(「すくも」と読む。高知県)、サイパンキャンプなどの牧歌的な様子は、近鉄の大ファンでもありキャンプレポーターとして当時取材で忙しかった、落語家の笑福亭仁智さんからもよく聞く。

ここ15年ほどは、ほとんどのプロ野球チームが沖縄で春季キャンプを張る。セリーグのたとえば・・宜野座キャンプは阪神タイガース。さすがに人気球団のキャンプ地、「こちら側」と「あちら側」の決まりごとは結構シビアー。牧歌的という表現はあたらない。このことは、読売ジャイアンツが絶対的人気を誇った時代の名残のようでもある。なぜなら、セントラルの各キャンプ地は落ち目球団にあっても、いまだそこはかとなく「ええかっこし〜」の臭気が漂い、牧歌的レベルが低い。

その点、パリーグはすごい! この点においてセリーグなど足元にも及ばない。特に、その立地的な特性から日本ハム・ファイターズの名護キャンプは牧歌度において群を抜いている。なにせ、宿泊先として利用するホテルと球場が幹線道路をはさんで向かい合わせ。必然的に日々日常のレベルで選手とファンとの距離感はゼロに近づく。「ええかっこし〜」では務まらない。

で、今年、注目すべきこと。斎藤佑樹投手は「いったい何キロを出すか?」球速のことではない。交通渋滞のことだ。

沖縄観光で絶対見落とせない大人気の「ちゅら海水族館」。国道58号のバイパスで別れ別れとなるが、丁度この付近からアクセスする。高速道路はちょいと手前、許田インターで終点、車はごく自然にこの付近に溜まる。名護は本部半島の付け根にあって、世界遺産今帰仁グスクや国頭村などへもここを通る。交通の要衝である。また悪いことに、この先、本部半島には大きな大きな「砕石・土取り場」がある。ダンプカーは四六時中、那覇方面との間をぶっ飛ばしている。まさに、ネックのようなところが名護窮状、いや、名護球場だ。そんなところに「ゆ〜ちゃん」がやってくる。

ボクはひそかに想像している。ゆ〜ちゃんが来ることによって、今年の日ハム名護キャンプはその牧歌度が新たな次元に突入するであろうことを・・。少々の交通規制ではど〜にもならん。もちろん、見学規制などもってのほか。これを平和裏に処置するには並のことでは、どないもならん!!

つまり、平和裏に処置される「破天荒な牧歌的規制」が必要なわけだ。国道58号は昭和40年代から延々と、自然サンゴの海を破壊し、埋め立て、那覇から北部まで伸びた。が、豊かな海は貧相な海にかわり(この国道沿いでは、自然なままの海岸線はほとんど姿を消した)、豊かさをもたらすはずの一大道路は、那覇を肥大化させるだけ、便利さと引き換えに地元に衰退をもたらした。

過大な道路整備や駐車場整備で対応するのではなく、様々な知恵を出し合い「やりくりとユーモア」で楽しみながら対応する。「破天荒な牧歌的規制」が見たい。ゆ〜ちゃんの、ほんわかとした笑顔を映像で見るたび、サンゴの海を壊すことはもう止めて、「破天荒な牧歌的規制」で対応すべし。そう強く思ってしまうのである。

あの笑顔はサンゴの海によく似合う。そう思えてならないのだ。