夢の行方

天満橋にある京阪電鉄のターミナルビル、京阪シィティモール(旧・松坂屋)。その壁を登ったり降りたりする物体・・昨年、中国で開かれた上海万博で人気を博したという「夢ROBO」なるロボットだ。1/16までの期間限定、ここで実演中!

この夢ROBO、上海万博では見物人の行列で押すな押すな、だったらしい。しかしいま、このニッポンで、「成長だけが未来」と信じ、その未来をビルデイングという構造物に照らし、「いじらしくも昇降だけを繰り返す」ロボットに、見果てぬ夢を投影させることが可能なのか? このビルは単なる商業ビルではない。水都大阪の象徴のような都心の港(八軒家港)、川面を行きかう観光船はここから発着し水上を行く。そんな場所だ。

少子高齢社会がハッキリとした人口減をもたらすことは既に知られている。人口増大と高度成長という中国に表れている「社会問題」をニッポンは問題にしていない。大人も若者も無言のうちに承知している事実は人口減社会だ。そこでは、ニュータウンというオールドタウンで空き家が急増し。消費が冷え。あっちこっちの街がしぼんでゆく。ターミナルといわれる「郊外と都心を結ぶ商業拠点」も例外ではない。

ロボットが子育てや介護に役立つ? 高度成長とは逆向き、成熟社会の象徴としてあるべきロボット像とは一体どんな風景なのだろう。ビル壁をいじらしくよじ登る「夢ROBO」を見上げ、そんなことばかり考えていた。

「あっ!」・・寒風に吹きっさらし。体が冷えてきた。首を左右にしてみれば、さっきは他に2人いたおっさんがボク一人。人類の進歩と調和。40年前、大阪万博の繁栄を懐古する人もいなくなった。