大晦日の風景

この小さな宿は天神さんのすぐ近く。大晦日から正月三が日は様々な露店がにぎやかだ。コンビニが雨後のタケノコのようにあっちこっちに出店し24時間営業を競う近ごろでは、露店商売も簡単ではなさそう。

若い衆の手間仕事のような露店はまったく見向きもされない。毎年同じ場所で同じ商品を売り、そこはかとなく年季の入った清潔な露店に人が集まる。「商売は牛の涎」とは、よく言ったものだ。この小さな宿の付近では、鯛焼きベビーカステラが年季の入った商売を重ねている。

鯛焼きは餡が多く生地の香ばしさもなかなかのもの。ベビーカステラもふんわか感と甘みが絶妙。どちらにも固定客がついている。いままさに、つくり置きに余念なく「ギリギリギリ」と焼き器を手返しする音がリズミカルだ。

ここは天神さんの裏門にあたる。いまは静かだが、除夜の鐘を待って一気に人がどどど〜んと溢れ出す。その流れが堰にでも滞留するように、売れ筋を知り尽くした露天で足止めとなる。他人さまの商売ながら、見ていて気持ちよく、小気味いい。

地下鉄もJRも今夜は終日運航で初詣の人は明け方まで途切れない。ギリギリギリ♪・・いつものようにリズミカルなこの手返しの音と共に新年を迎える。