虫籠窓(むしこまど)の集落と大阪〜福岡とのつながり

完全ではない二階のことを「中二階」と言った。その二階部分の窓が、まるで「虫かご」のようにデザインされている。これを虫籠窓(むしこまど)と言う。
この「むしこまど」、地方都市の伝統ある集落に旅すればまだ見かけることもある。しかし都市部で見かけることは、すでにない。そう思っていたのだが、これがなんと大阪府河内長野市の小山田という町に一群となって現存している。驚いた! しかも河内長野市小山田には、金毘羅さんがあり、住吉神社があり、いまから1300年前、飛鳥時代のものとされる押出仏(銅板をレリーフ状ににした仏像)まで発見されている。この押出仏は1984年に見つかり、現在は奈良の国立博物館で保存されている。
小山田という地名は九州から瀬戸内海沿岸、関西にかけて多くみられ、そこでは神功皇后(じんぐうこうごう)伝説が残り、そのほとんどに住吉神社があるらしい。わたしも今年の初夏、福岡を旅した際に同様の言い伝えや地名などを見聞きした。河内長野市大阪府南部にあるベッドタウンだが、高野山から大阪湾に出る関所のような場所に位置し、「観光地化していない」ところが魅力の地域だ。

注釈1[観光地化について]

  • 観光客や観光に係る商売をしている人が際立っている。
  • 他所で大量生産された名産・土産品の店が目立ち、その場所でつくられた逸品が少ない。
  • 観光ブームや季節変動によって、きわめて短期間に町の様相が一変することがある。

このような、従来型の観光地概念に対し
注釈2[ゆるやかな観光概念]

  • ごくごく普通の定住者や居住者の「生活と共にある観光」。
  • その地域の伝統産業やものづくり、生活の中にある逸品などに触れることのできる観光。
  • 中長期的な「町のあり方」と共に、交流人口を増やすという視点からの観光。

など、この国の極端な人口減少局面において、「ゆるやかな観光概念」による町の維持・継承が考慮されつつある地域も多い。 
歴史には疎いが、ゆっくり歩き見聞きする旅には興味がある。この河内長野市小山田の地から、九州・福岡へ・・ものがたりの旅を深めてみたいと考えている。