江内戸の景(えないどのけい)

九州の大分県は別府や湯布院などの有名温泉地があって観光県としての誉れが高い。大阪から見れば月とすっぽん、もちろん大分が月で、大阪はすっぽん・・
ちなみに、大阪の「すっぽん料理」は美味しく、かつヘルシーでおまけに元気がもらえる。ゆえに大阪はスッポンで可とする・・先日その、スッポンの大阪で学会の総会があった。「ものがたり観光行動学会」という、結成して間もない学会である。人数もまだまだ少ないが、何人かの学会員が九州からお見えになった。そのなかに大分は、「江内戸の景(えないどのけい)」を深く愛され、その地域にお住まいのお二人がいた。
この学会は、20世紀型のマスツーリズムとは一味違う観光スタイルを提唱し発掘しようと結成されたもので、「行動の人」が集い研究する場だ。江内戸の景には昨年春、毎日新聞の取材でちょこっと足を踏み入れたとこがある。大野川という美しい流れの、正真正銘の絶景地に「江内戸の景」はあった。見とれた、ただただ見とれた。大きすぎるわけでもなく、かといって小さいわけでもない。ころあいの流れのそこ、ここに集落が見え、人が住む人いきれを感じた。
さらに、手入れが行き届いた田畑が見え、ところどころの家屋からはうっすらと煙がたなびく。ゆうげの支度か? 人を寄せつけない手つかずの自然や、手を加えに加えた京町屋のような造形もいいが、このような「ニッポン」にこそ、チカラを感じる。ごく普通に生活し、営みを継承し、人知れずの約束事も守り育ててきたであろう力だ。その力が五臓六腑を揺さぶった。
お二人は、この学会にわざわざここから来てくださった。お一人は川で生き抜いてきた達人のような先達。さらにお一人は、この先達を尊敬し、地域に暮らしながら「この地」の研究を続けられている、日本文理大学の杉浦先生だった。初対面である。たまたま、その毎日新聞の紙面をホームページか何かで見届け、ただ、それだけの縁で入会され、総会に馳せ参じてくださった。実践のない、頭でっかちの研究者には真似のできない行動力、感服した。で、毎日新聞の記者にその話をした。ニッポンの原風景に係る話だ、深い話である。
記者は提案した・・ちびりちびり大阪の地酒を飲みながら、さらに、さらに深みを探るべきだと、「乗った!!」 しみわたる酒の勢いが増してきた。いつしか道がそれ、話は大分の地酒、大阪のそれへと展開した。くるくると回る頭で考えた。
「いずれにしても、ニッポンの魅力は五臓六腑にしみわたる」 「いま一度、江内戸の景へ」酔っ払ったおっさん二人、奇妙に意見が一致した。