コンクリート打ちっぱなし

この小さな宿の建築工法はコンクリート打ちっぱなし、日本独自の工法というわけではないが、安藤忠雄氏が世界的建築家として名声を得て以後、氏の表現手法でもある、この耽美的な質感はジャパンクールの代表格の一つでもある。
その証拠に、建築や日本現代史を学ぶ諸外国の学生が、安藤忠雄建築を「観光」しにやってくることが稀ではない。
ちなみに、安藤事務所はこの宿から歩いてもいける距離、何らの面識もないはずなのに「行ってくる」と出かけ、事務所をノックした猛者も1人や2人ではないようだ。
ニッポンを代表する、そのコンクリート打ちっぱなし建築だが良いこともあれば、当然悪い所もある。良いことの筆頭は、驚くほどクリーンであるということ。最近の建築では、内装仕上げに石膏ボードとビニールクロスを多用するが、空気の清浄感が全く違う。悪いことの筆頭は、暑さと寒さに弱い、このことに尽きる。コンクリート壁の蓄熱飽和点を超えて気温が上がれば、まさに「焼け石に水(熱源)」状態となり、コンクリートそのものが「蓄熱材」と化し、なかなか放熱が終わらず冷めてくれない。一晩中、焼け石になっている・・*1
今年のように、灼熱の太陽と気温35度を超える酷暑日が続くとそれはそれは大変だ。また逆に、気温が5度前後を割り込むと、しんしんと冷え込みが厳しい。そんなコンクリート打ちっぱなしではあるが、ボクはこの騙しのきかない、日本的心象を照らすかのような「正直な建築物」が性に合い、とても好きだ。ただし!!これから家を建てる計画のある人で「コンクリート打ちっぱなしを・・」と考えている人は、是非とも大阪の酷暑日に宿泊し、その「熱源状態」を確認すべきだと思う。
なぜなら・・やせ我慢の好きな昔堅気の人には向くが、現代的で合理的な人には、とても我慢ならない不便なモノ、そのように感じるのではないか・・そう思えてならないからだ。
そう言えば、安藤忠雄氏もその代表作・不朽の名作「住吉の長屋」に暮らすのは「忍耐と体力がいる」と言っていたような気がする。

*1:もちろんエアコンは効く