ニッポンの魅力

外国からの旅人が多くなったこの10年、当然のことながら為替レートには敏感になる。この小さなペンションでは、3〜5年ほど前、円がそこそこ安定していた頃が、外国からの旅人が最も多かったように思う。なぜだか知らないが、ごく自然にヨーロッパからの旅人が多くなっていった。

彼らは日本文化と環境。日本食と為替レートに驚くほど敏感。だから3.11以後の原発大本営発表と、1ドル75円ときた日には完全にお手上げである。

人生に様々な負荷がかかるような仕掛け・・極めつけは「男子一生の本懐」でローンを組み、家を持つこと。そうすると、オリに入れられたネズミのように、一生あくせくコマネズミ。そんな、負荷がかかる仕掛けのどん詰まりに原発は仕掛けられていた。そんなからくりが、この夏の「節電・節電」の念仏で、ネタ明かしされた。

国の観光政策は、外国人観光客を2千万人、3千万人と倍増させる(現状は年間1千万人程度)数値目標だけが走り、空念仏のようになっているが、欧米人にしろアジア人にしろ、旅に至る動機と日本へのあこがれの本質は、高度成長した国なのに「環境負荷をかけない暮らしをしている国ではないか」というものだった、ように思う(お客様に触れてきた実感として)。

原発大本営発表は、実質的なキケンと旅情の喪失という両方からニッポンの価値をズタズタにしてゆく。あの国に行ってみたい。ニッポンに触れてみたい。そんな恋心にも似た詩情が、影もカタチもなくなっていくことが今現実にある。

チェルノブイリへ旅したい? この問いかけに対し、いまボクたちの想像力が欠けている。